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2004.01.25

「悪魔の機械」がやっぱり一番

K・W・ジーター作の「悪魔の機械」という途轍もなく面白い小説がある。日本でもハヤカワ文庫FTから1989年に翻訳が出ている。ジェイムズ・P・ブレイロックの「ホムンクルス」と並んで、”スチームパンク”と賞されるジャンルの代表作である。

と言っても、”スチームパンク”(蒸気機関の時代を舞台にしたSFであり、パンクと呼ばれるだけの破天荒な小説。まあビクトリア朝のロンドンな感じ)というレッテルは、「ホムンクルス」と「悪魔の機械」、そしてティム・パワーズの「アヌビスの門」など諸作用に作られた言葉なところがある。実際にはこのあたりの数作しか実物がないジャンルである。較べてみた時、私はためらわずに「悪魔の機械」を一番に推す。

たまたま今日、故有って久しぶりにこの本を取り出し、読み返してみていた。原文の英語も擬似古文体となっているので、かなり面倒きわまりない言い回しが目立つ。今思うと、この日本語版がとてつもなく面白い読み物になっているのは、訳者である大伴 墨人さんの力量による部分が大きかったのだ。大伴さんは他にもティム・パワーズの「アヌビスの門」というこれまた19世紀イギリスを舞台にした破天荒SFファンタジーや、モダンホラー作品であるレイ・ラッセルの「インキュバス」の翻訳をされている。

どれも素晴らしく面白いが、大伴氏以外の方が、「悪魔の機械」や「アヌビスの門」のような、ニセモノ古文調のSFという難物をどこまで読んでいる間夢中になれる小説として日本語にしていただけたのか、すぐには思いつかない。

私はここからジーターのファンになり、原書もほとんど集めてしまったのだが、先ほどAmazon.co.jpで「悪魔の機械」の原書ペーパーバックがユーズド商品で9千円を超える価格で出品されていたのには驚いた(笑)。この金額だったら、サイン入り限定ハードカバーの古本が買えちゃうよ~(「ドクター・アダー」「悪魔の機械」ともにそういうのが存在しており、私は両方買ってしまった馬鹿者である・・・・)。

ジーターというのもよく分からない作家で、出版社から軒並み出版拒否されて刊行まで恐ろしく時間が掛かった問題SF「ドクター・アダー」を書いたかと思えばマッド・ビクトリアン・ファンタジーの「悪魔の機械」を出し、ホラーを書いたかと思えばスター・ウォーズやスター・トレックのノベライズを手がけ、かと思えばフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の続編となる「ブレード・ランナー2」「ブレード・ランナー3」を書いたりと、どうも気まぐれ。初期のSF長編やホラー系作品は結構未訳で残っている。

全体に暗い影が漂う作品が多いジーターにあって、「悪魔の機械」はマッドであるが故に、もっとも楽しめる作品ともなっているのだ。こういう、他人様にお勧めしたい本はいつでも流通していて欲しいなあ、ホント。「アヌビスの門」も品切れだし。寂しいですね。

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