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2004.03.21

アンサンブル・モデルンのザッパ演奏はやはり桁違いだ!

フランク・ザッパ:グレッガリー・ペッカリー」は途轍もない出来映えだ。現代音楽ファンものけぞり、ザッパファン驚愕、そしてロックファンもびっくりの素晴らしいアルバムである。

フランク・ザッパは20世紀アメリカ音楽の巨人だが、ロックミュージシャンとしての面以外、特に現代音楽作曲家としての評価はまだまだこれからだろう。それでも1993年のザッパ死後、徐々にザッパ作品を取り上げたレコードはリリースされてきている。

私はなるべく頑張って追いかけているというレベルのファンなので、決して全ての関係レコードを集めている訳ではないのだが、買ってみた中で満足できるものはほとんどない。今までに買い集めてみた演奏について、ここでまとめてみよう。

ザッパバンドのOBが集まって演奏した「Zappa's Universe」が取り敢えず先駆としての登場だった。しかしこのアルバムを聞いて分かったのは(ビデオもある)、いかに同じメンバーが演奏しても、ザッパ抜きだとやはりイマイチ、ということだった。

クラシック畑、ジャズ畑のミュージシャンがその後に続く。

The Zappa Album Finnish Ensemble Ambrosius
これはけっこういい。古楽器アンサンブルというあたりがまたいい。演奏もまずまず見事だが、どちらかというとリラックスした演奏になっている。もっとオリジナルに近い速い演奏だったらなあ、という不満もあるが。

Prophetic Avenue Le concert impromptu
こちらは管楽器アンサンブルによる演奏。バスクラ、オーボエなどの響きで聴くザッパはなかなか楽しい。けれどもあくまでオリジナル演奏を知った上での別バージョン、という気がする。つまり、曲のモチーフを管アンサンブルに移植したものだから。

Frankly a Cappella: The Persuasions Sing Zappa The Persuasions
こちらは黒人アカペラグループによるザッパ作品集。これはかなり良かった。このThe Persuasionsというグループ、全くの無名時代にザッパと交流があったようだ。ザッパ自身もこの連中のパフォーマンスを大変気に入っていたとのことで、そう考えると「You Are What You Is」あたりのゴスペル風多重コーラスあたりは、The Persuasionsみたいな演奏の影響があるのかも知れない。

Ed Palermo Big Band Plays the Music of Frank Zappa Ed Palermo Big Band
こちらはおそらくジャズ・フージョン畑の演奏家か。全体にリラックスした音になっている。悪くない演奏ではあるが、毒気が足りないかなあ。みんなキレイになりすぎているような気がする。

これらのアルバムとアンサンブル・モデルンによる演奏は、結局「格が違う」とでも言いたくなるくらい質感が異なるのだ。

まず編曲レベルが違う。
例えば、アンサンブル・モデルン(以下EM)の編曲は、極めてザッパのオリジナルスコアに近い。例えばEnsemble Ambrosiusの「Night School」とEM版を較べてみる。この曲は「Jazz From Hell」に収められたシンクラヴィア(”人間には演奏できない”複雑な曲を正確に演奏させるためにザッパが大金を投じて購入したシンセサイザー)演奏が最初の発表である。これを「自分たちに演奏できるように編曲する」か「スコア通りに演奏できるように練習するか」の差である。
この違いは圧倒的で、EM版は始まった途端に背筋に寒気が走る。

次にロックミュージック的なダイナミズムの違い。
上で紹介したアルバムは、どれも「ザッパの作曲した音楽を自分のスタイルで演奏した」ものだと言える。
EMが恐ろしいのは、「EMという演奏家集団がザッパの作曲した作品を、ザッパのスタイルで演奏している」ことである。
多くのアルバムで取り上げられている「Peaches En Regalia」にしても、きれいなメロディーを演奏している、というのではなく、オリジナル演奏のロックっぽさを感じさせてくれるのはEMの演奏だけである。

最後に、細部へのこだわり。
今回収録された「グレッガリー・ペッカリーの物語」におけるこだわりは、オリジナルスタジオ盤での複雑なテープ編集の結果として作り上げられた作品をそのまま生演奏するところまで行っている。テープの早回しによる甲高い声のボーカルも忠実にそうした声質で歌われている! つまり作曲者の意図した音質・曲の質感に対しても極めて忠実なのである。

何度も繰り返し聴いているが、その度に正直恐ろしくなる。それくらい途轍もない演奏のアルバムなのだ。
理由は不明だが、日本国内版は通常のCDで、ヨーロッパ盤はCCCDらしい。
これは国内盤購入が絶対オススメ。訳詞、解説共に、まるでザッパのアルバムみたいなレベルで充実している。
素晴らしい。

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Tracked on 2004.04.14 at 09:51 PM

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