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2004.06.10

「だれが「本」を殺すのか」を読んでみた

新潮文庫、2004年5月新刊として今本屋に並んでいます。

佐野 真一 著
だれが「本」を殺すのか (上巻)
だれが「本」を殺すのか (下巻)

実は私、今回読むのが初めてです。ハードカバーの時は全然知らなかった(笑)。ノンフィクションの棚自体にあんまり足を向けていなかったのですね。それがまあ、今年になってからの著作権法改正騒動もあって、ちょうど関心が高い時だったので読んでみました。今回文庫本化にあたって、下巻の1/3くらいは書き下ろしです。すでに雑誌・書籍における貸与権検討の場も登場するタイムリーさ。

まず感想。
さまざまな現場からのレポートは大変興味深く、一気に読んでしまいました。ところが、「本好き」ということでなら私ももっと著者に共感できそうなものなのに、意外にもあまり出来なかったのが驚き。うーん、なぜでしょうか。現在の出版業界が極めて危険水域にあるくらい落ち込んでいることや、そうした状況に至るさまざまな原因については、丹念な取材で多くの情報が集められています。ところが、インタビューの内容紹介後にちょこっとつく著者のコメントに、どうも共感できないことがしばしばあったのでした。

特に電子出版、青空文庫、ブックオフあたりへの感じ方が私とは随分違うなあ、と思いました。

次に、今回ここでご紹介する本題。
国民全体としての活字離れと出版大不況、相次ぐ書店廃業と大規模店舗の増加、堅い本がどんどん減って売れ線ばかりの「金太郎飴書店」が増えている傾向、図書館・マンガ喫茶などを目の敵にする出版社、ブックオフに向けられる様々な敵意、などなどを、私は日本の音楽業界を当てはめながら読んでみました。どうもとても両者は多くの点で似ているように思えます。

読者育成を怠ってきたくせに、売上が落ちると貸与権を振りかざして図書館までコントロールしようとしている出版業界って、リスナーやアーティストの育成を手抜きしてきて輸入権やらコピーコントロールやらに血道を上げるレコード会社ととても似ているように感じられてなりません。

「ベストセラーがいくつか出れば、出版不況なんてすぐ取り戻せるんだ」と考える出版業界は、「ミリオンセラーが出れば売上は回復する」と考えるレコード会社に似てますよね。そうした「逆転ホームラン」ばかりを狙っているから、噛みしめるほど味が出る作品が減ってしまう。噛む必要のない本や音楽ばかりを提供していれば、読者・リスナーの咀嚼力は低下するばかりで、ますます摂取量が落ちていく、という負の螺旋を生み出してしまうあたりもそっくりじゃないでしょうか。

CD輸入権創設阻止という緊急事態への対処で、毎日結論を出して行動を起こす日々は、ちょっとだけ小休止しているのですから、この隙にこちらも出来るだけ情報収集して、いろいろなことをじっくり考えておきたいと思っています。そうした点から、一読の価値はある本だったかな、と。

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Comments

ミリオンセラーとかベストセラーとかって、業界の人がほんとにその内容をわかって、
自分も感動してるから是非これを皆に読んでもらいたい、聴いてもらいたい、ということであればいいんですけど。
自分でもこんなものが?、と思ってるような作品をなんとか売ろうという時点でおかしくなっちゃってると思います。

Posted by: isshee | 2004.06.10 at 10:10 AM

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