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2007.07.06

リスナー自身がレコード会社?:Sell A Bandに見る音楽ビジネスの未来

Sell A Bandというサイトをご存じだろうか? ここは新進アーティストが出資者を募るためのサイトで、めでたく$50,000集めることが出来ると、プロデューサー、A&R担当が付き、また一流のスタジオでレコーディングすることが出来るようになるというものだ。出資は一口$10で誰でも出資できる。この出資者のことをSell A Bandでは"believer"と呼んでいる。

believerになると、出資したアーティストが$50,000を達成してアルバムを作成した際に、初回限定盤をもらえる。また以降CD販売とダウンロード販売の一定割合が支払われる。一口$10で全体が$50,000だから、一口の出資なら5000分の1のリターンになる。

出資は引き上げることも出来る。$50,000を達成できずに終わる場合にも返却されるし、途中で引き上げることも出来る。引き上げて手元にプールした分は他のアーティストに出資することも出来る。もちろん、自分の銀行口座に返してもらうことも出来る。

昨年くらいにどこかでこのサイトの話を聞いた記憶はあるのだが定かではない。その時はあまり興味の持てる音がなさそうな印象だった気がする。

そのSell A Bandにふとしたことから最近関わり始めた。きっかけはポーランドの女性シンガーソングライター、Julia Marcellである。
Julia Marcell

この人の曲を初めて聴いたのは実はレコミュニでのこと。海外の様々なアーティストを紹介してくれているビッグフィッシュネットワークさん経由で配信されたのだった。これがなかなかに良かったので、アーティストサイトに申し込んで5曲入りEPを入手したのだった。

7月になって、JuliaがSella Bandというところで2ndアルバムのための出資者を募集しているとのblog記事を見てさっそく行ってみた。

ところがなかなか資金の投入が出来ない。Paypalもクレジットカードもエラーになってしまうのだ。試行錯誤している内にタネが分かった。どうやらShipping Address部を見て通貨単位を切り替えているらしい。一時的に国をUnited Statesにした状態で送金手続きを行ってみたら難なくPaypal送金が成功した。通貨がJPYだと必ずエラーになってしまう。

ところで、実は日本からの出資者は私がお初らしいのだが、これは送金にまつわるシステム不備のせいではないだろうか・・・。もし同じように送金が成功しないという現象に悩まされている方がいれば試してみて欲しい。

(追記:あちこちチェックしていたら、ちゃんと以前にも日本からの出資者は存在していた。たまたま私にメッセージをくれた人にとっては初めて見る日本からの出資だっただけのようである)

さて、あらためてこのサイトをあちこち覗いてみるとなかなか興味深い。すでに7組のアーティストが$50,000を達成しており、アルバムを完成させたアーティストも2組いる。残念ながらこの2枚のアルバムは私の趣味ではなかったのだが、現在録音作業中のアーティストは期待大だ。つい先日$50,000を達成したばかりのオーストラリア在住女性歌手のMandyleigh Stormは実に力強いシャウトを聞かせるロックで痺れる。フランス娘のclémenceはキュートで歌もなかなか聞かせる。アメリカ娘のLilyはラテン風ポップスでこちらもなかなか。イギリスからの3人組Second Personはおしゃれでジャジーなエレクトロポップといった趣き。ニュージーランドのmaitreyaは2人組なのかな? ひっそりした趣のあるHip Hopとでも言おうか(すみません。私このジャンル疎いんです)。まあこんな感じで、随分とバラエティに富んでいることだけは確かだ。

Sell A Bandはつい最近、サイトのスローガンを"You Are The Record Company"に変えたらしい。以前は“Your Music, Your Choice”だったそうだ。スローガンの変更を含めてサイトの資金配分などについてもまとめたNews Letterが以下で読める。

Sellaband Tribune 19-06-2007

このサイトをうろついて、チャートを眺めたり、いろいろなアーティストの曲を聴いてみたりしていると、次に気になるのは出資者だったりもする。大口の出資者も結構いるし、複数アーティストに出資している人も多い。またアーティスト同士でコメントし合っていたりするし、あちこちにコメントを残しまくっているアーティストもいる(笑)。さすがに出資が絡んでいるせいか、MySpaceに較べるとずっとポジティブで真っ当な感じはする。それでもちょっと出資しただけの私のところにもPRに来るアーティストがちゃんといる。みんな頑張ってるよなあ。

プログレバンドのマリリオンは、ファンからの予約で資金を集め、ニューアルバムをリリースする、ということをずいぶん前にしていたはず。これは2年くらい前に読んだ音楽ビジネスの未来について書いた何かの本で読んだはずなのだが書名が思い出せない。実際ある程度事前予約が(と言っても送金込みの)集められれば、それでアルバム制作は可能になるはずなのはどのアーティストでも一緒ではないだろうか。それをネットを使ってシステム化した一つの実例がSell A Bandだと言えるだろう。

CD JournalのNEWS(RSS配信もされている)を追っていれば、ここ数年発売中止になるタイトルが結構あることに気付くはず。特に洋楽ではこの傾向が著しい。どうやら事前予約数が伸びないと、すぐに発売中止になったりするらしい。つまり大手レコード会社からのリリースも、売り上げ保証がないと出せないくらい今のレコード業界の体力は落ちているのだ。

ということは、中堅アーティストだろうと新進アーティストだろうと、ファンはアルバムを待ち望んでいたとしてもそう簡単にはレコードが作れない、ということでもある。宅録レベルのデモ音源をネット配信するくらいは出来ても、ちゃんとスタジオで録音した音源を作るにはそれなりの予算が必要になるからだ。だったら、もっとファンによる事前投資とアルバム作成、そし利益還元までのシステムを再構築してもいいのではないだろうか?

実際、Sell A Bandにもしも登録してくれたら是非とも投資したいアーティストは結構いるような気がする。初回限定盤が手にはいるなら、それだけで3~4000円は出せる。アーティストによっては1万円くらい出してもいいから新曲を出して欲しい、ということもあるだろう。売れる!、と確信出来てかつ資金があるなら、銀行に預金するよりもいい投資になる可能性だってある。

Sell A Bandを覗いていると、音楽ビジネスの未来につい想いを馳せてしまう。通貨単位によるシステムエラー回避方法さえ知っていれば日本からだって簡単に参加出来るから、興味を持たれた方はぜひ一度アクセスしてみて欲しい。私が参加するきっかけになったJulia Marcellももし気に入ったら投資して欲しい。彼女のフルアルバムを是非とも聴いてみたいと私は願っている。


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