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2008.01.09

私がダウンロード違法化に反対する理由

2007年の私的録音録画小委員会にて、違法にアップロードされた音楽・映像ファイルのダウンロードを新たに違法としよう、という動きがあったことはご存じでしょうか。このblogでもこの問題に関するパブリックコメント募集や、シンポジウムの話題を取り上げたことがあります。

この問題自体については多くのblogで取り上げられていますので、どこかでご覧になっているかも知れません。現時点ではブロガーの間でもまだ意見が割れているように見えます。ただ中にはお互いの主張を理解しないままのやり取りも散見されますし、事実誤認と思われるものも少なくありません。

これまでの経緯については、日本違法サイト協会のblogなどが情報も多く参考になると思います。

 ダウンロード違法化の動き 2007年12月20日-24日

 ダウンロード違法化の動き 2007年12月24日-2008年1月8日 (1)

私的録音録画小委員会の中では推進派は「違法なものをダウンロードするのを違法化して何が悪い?」という挑み方をしてきているようです。一瞬「・・・確かに。・・・何が悪いんだろう?」と迷うのではないでしょうか? 人間誰でも、こうした挑戦的な聞かれ方をすれば戸惑うのは無理ないですよね。

思うに「やり過ぎだから」、というのが端的な回答になるでしょう。いろいろ考えてみたのですが、あえて例え話をするなら、次のようなケースがまあまあ近いのではないかと考えるに至りました。

2007年の道路交通法改正では、飲酒運転をするおそれのある者に対する「酒類の提供」をした場合、提供者は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金という規定が生まれました。例えばこれをさらに推し進め、『飲酒運転をするおそれのある者に対する「酒類の提供」を見ていながら止めなかった者も道路交通法違反とする』としたらどうでしょうか? ダウンロードを違法化するというのは、こんな改正に近いと思います。

飲食店に入って、お酒を飲んでいる人を見たとしましょう。その人が運転者だと知っている場合、周囲の人は止める義務を持っている、と考えるのです。飲酒運転は犯罪です。現在では運転者に対する酒類の提供も犯罪です。ですから、犯罪現場を目撃しながら阻止行動を取らないことを新たに犯罪化しよう、ということになります。期待される効果として、さらに飲酒運転が減り、交通事故が減り、事故による死者・負傷者も減るでしょう。現在の法律では、酒気帯び運転者に対する車両提供者、運転者に対する酒類の提供者、飲酒運転の同乗者が処罰対象となっています。つまり、同席して一緒に飲んだ仲間に対しては、道路交通法上何の咎めもないのです。これを明確に違法化することで、より一層飲酒運転の撲滅を推進することが出来ます。

どうでしょう? 違法行為を見過ごすことを違法にして何が悪いんでしょうか?

Q.でも、そんな法律を作ったら、飲み屋で同席していただけで犯罪者になってしまうのではありませんか?

A.心配いりません。あくまでも「情を知って」いながら制止しなかった場合に法律違反となりますので、単に同席していただけで罪に問われることはありません。

Q.違法に酒類の提供をしている可能性があるお店に入ると、いつ自分も巻き込まれて法律違反をしてしまうかと心配です。

A.ご安心下さい。適法に酒類の提供をしている飲食店については、専門機関から認定マークを発行する予定です。店舗に認定マークがあるかどうかを見ていただければ安心して入店していただけます。認定マークのないお店については、違法酒類提供店である可能性があります。

Q.現在でも、運転者以外の周囲の責任については、教唆や幇助罪などの刑法を適用しているはずです。それで十分なのではありませんか?

A.教唆や幇助のような曖昧な規定ではなく、明確な規定を作ることで、一層効果的に飲酒運転を減らすことが出来るようになるからです。

上に仮想QAを書いてみました。実際ダウンロード違法化についても、文化庁がまとめた中間報告はこんな感じのレベルです。

ちょっと冷静に考えてみれば、こんな法律改正はやり過ぎだと思えてくるでしょう。

ダウンロード違法化に反対している人たちの意見は、この例で言えば次のような内容になるかと思います。

影響範囲が広すぎる(1):教唆や幇助で罪に問うとすると、やはり一緒に飲んだ仲間が対象になるのでしょう。つまり明らかに情を知っている、つまり「目の前で飲酒している相手はこのあと運転して帰る予定だ」と知っていながら飲ませてはいけません、ということです。これを拡大して、「酒類の提供を見ていながら制止しなかった者」としてしまうと、その時店内にいた誰もが違反の対象となる可能性が生まれてしまいます。これはやり過ぎではないでしょうか? いくら店内にいただけでは罪にならないと言われても、後ろの席からどうやらこのあと運転して帰るらしい飲酒者の会話が聞こえて来たら制止する義務を新たに負うとは・・・。また入店時にいちいちマークを確認する作業も要求されます。なぜそんな負担をしなくてはならないのでしょうか。単に飲食が目的で、飲食店に入ろうと思うだけなのに・・・。

影響範囲が広すぎる(2):影響を受けるのは飲食店の客だけではありません。多くの客が自分に影響を受けることを恐れ、アルコール飲料の提供をする店舗自体を避けるようになることから、飲食店自体の収益悪化、酒造業界の売上げ大幅ダウンも生じてくるでしょう。もちろん、人命はかけがえないものですし、交通事故はないに越したことはありません。しかし、そのために道路交通法違反対象を大幅に広げ、日本経済自体にも大きな影響を与えるだろう改正を、詳細な検討もなしに導入するのは問題でしょう。

適法マークには問題がある:お店にマークがあったとしても、違法行為が行われる可能性は常にあります。全ての適法マーク店に常駐監視員がいれば別ですが・・・。また類似マークを貼られてしまえば普通の人には見分けられないでしょう。仮に偽造困難なマークを作ったとしても、今度はどうやって店舗を審査するのでしょうか? 審査コスト、マーク製造コストは誰が持つのでしょうか? 審査に費用が掛かるとすれば、経営が苦しい店舗では取得自体が負担になるのではないでしょうか?

萎縮効果が危ぶまれる:マークがあるにせよないにせよ、酒類を提供している店舗内で飲食していると、いつ道路交通法違反を犯してしまうか気が気でなくなります。そうなれば当然、酒類を提供していないお店を選んだ方がよほど安全です。マークを見て判断する負担を負うより、そもそも避けてしまえばいいのですから。最も、それがきっかけでほぼ全ての飲食店からアルコール飲料がなくなってしまえば、飲酒運転のチャンスが相当減りますから、それでいいのかも知れませんが(笑)。さらに言うなら、車がなくなれば飲酒運転はゼロになりますね(笑)。著作物自体がなくなれば、確実に違法ダウンロードもゼロになるでしょう。

違法店舗の見分けは困難:適法マークがない飲食店すなわち違法店舗、とは言えないのが難しいところです。そもそもアルコールを提供していない飲食店ならマークは必要ないからです。個人が自分で作った音楽をファイルにしてHPに置いておくのは合法ですが、そんなサイトにも適法配信サイトマークをくれるのでしょうか? というより、そもそも飲食店でアルコールを提供すること自体は別に違法でもなんでもないのです。また車で来たお客だからといって、直ちに本人が運転すると決めつける訳にもいきません。帰る段になって運転代行を頼むかも知れませんし、実は同乗者がハンドルキーパーで帰りに運転してくれるのかも知れません。実際には、道路交通法のこの規定も、どうやって運用しているのかよく分かりません。

もちろん、他の観点からの意見もありますが、飲酒運転になぞらえた例では少々限界がありますのでこのくらいで・・・。

もしこれまで「ダウンロード違法化」という言葉は知っていても詳しい内容は知らなかった、という方がいらっしゃいましたら、「文化庁が現時点で提案している内容はこのくらい乱暴なものだ」ということをまずは知っていただければと思います。そして全てのインターネットユーザーが影響を受けてしまうような法律が、ろくに議論もされないまま生まれてしまったら何が起こるか、ぜひともご自身で考えてみていただきたいと思います。

このページは xfy Blog Editor を利用して作成されました。

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