ガソリンの値段はいつから変わるのか?
税制法案30日再可決 みなし否決後、56年ぶり(東京新聞)といった内容の記事が複数出ており、ガソリンスタンドは駆け込み需要が続きそうだ。しかし、ちょっと下記を読んでみて欲しい。要は、仮に4月30日に衆議院で再可決されたとして、その法律が実効性を発揮するのはいつからなのか?、という点に大きな問題がある、ということだ。
非常な即日公布・施行!(白川勝彦 永田町徒然草)
道路特定財源の暫定税率を今後さらに10年間にわたり課すことを内容とする租税特別措置法改正案が4月30日に再可決されたとしよう。ところが永田町徒然草No.762「これは、“夢か現か幻か”(その1)」で説明したように、この法律には施行期日が4月1日からとなっているのである。だが4月1日はとうに過ぎている。こうした場合、この法律は公布された日から施行されると事務当局=官僚たちは主張している。しかし、そんなものは行政的解釈でしかない。裁判所の解釈であろうが、行政的解釈であろうが、学者の解釈であろうが、“解釈”は解釈でしかない。いろいろな解釈があり得る。それを避けるためには、「この法律は公布の日から施行する」とハッキリと法律に書いておけば良いのだ。「公布の日」についてはそんなにいろいろな解釈がある訳ではない。法律家の通説は、「法律が官報に掲載され、その官報が政府刊行物サービス・センターで販売に供された時が公布だ」とする。
だから独立行政法人国立印刷局(かつての大蔵省印刷局)が成立した法律を受け取り、これを版組みし、印刷して全国に配送し、それが販売所に届き、販売に供されるためには、最低限の時間はどうしてもかかるのである。かつては搬送にもっと時間がかかった。いくら宅配便が早くなったとしても全国的に同じ日いう訳にもいかないだろう。そこで霞ヶ関にある政府刊行物サービス・センターで販売に供された時ということにしているのである。これも解釈である。
しかし、その前にもどうしても必要な手続きがある。「憲法改正、法律、政令および条約を公布すること」は天皇の国事行為である(憲法7条1号)。法律の公布は天皇の国事行為であるから、「内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う」(憲法3条)。「天皇が公布を行う」ためには内閣の助言と承認を必要とする。その助言と承認を行うのが閣議である。全大臣が法律の原本に署名する。その原本に天皇から御名御璽を戴く。御名とは天皇の直筆の署名であり、御璽とは国璽(天皇の印璽)のことである。
租税特別措置法改正案が再可決によって法律になったとしても、以上のような手続きを踏んで法律は公布される。さらに上記の官報掲載という手続きが必要なのである。マスコミでは4月30日再可決され、ガソリンや軽油は5月1日から値上げになると報道しているが、こういうことを知っているのだろうか。知っている人もいるのだろうが、4月30日再可決された場合には、非常的な作業を行わなければ5月1日から暫定税率を課すことは非常な手続きを踏まなければならない。そんな非常事態のようなことをしなければならない案件なのだろうか。
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暫定税率、与党「自滅の再議決」へつき進む (保坂展人のどこどこ日記)
なるほど、「4月1日施行」という法律を4月30日に「3分の2再議決」するというのは、おかしな話だ。4月 1日施行という法律が成立するのが約1カ月後というのは、法の不遡及の原則から見ても、本来は「5月1日」に修正した法律を成立させるべきだろう。しかし、そもそも再議決時には衆議院だけで修正することが出来ない。政府・与党としては目をつぶることにするということなのだろうか。この点とさらに、即日公布・施行というのもムチャクチャな話だと、議院運営委員会で仙谷議員が主張したが、与党側は無反応だった。おそらく、与党にとっては「それどころじゃない」という状況だろうか。補欠選挙が平岡さんの輝かしい勝利に終わり、大義なき「再議決」への突入で内閣支持率は2割を切る。森内閣の記録をこれからは追う展開となり、民意に背反した旅路に赴こうとしているのである。
そうなのだ。国会で決まったとして、法律の発布もなしに実効性を持つなんてありえないはずなのだ。
この一点だけを取り上げても、既に条文自体がおかしな状態になってしまっている法案をそのまま可決するなんてムチャクチャは止めるべきだと言えるだろう。
今回の再可決は、憲法違反。(白川勝彦 永田町徒然草)
4月30日は、本当に61日目!?(白川勝彦 永田町徒然草)
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