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May 2008の9件の記事

2008.05.29

椎名さんには恨みはないが・・・

「消費者のみが負担」を消費者は本当に望んでいるのか,補償金制度とコピーワンス問題で権利者会議が会見(ITpro
「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見 (1/2)ITmedia
「ダビング10を人質にはしていない」権利者側が補償金問題で会見INTERNET Watch
「ダビング10」開始日確定できず 補償金で対立深く日本経済新聞
「ダビング10を人質にしてはいない」。権利者団体会見AV Watch

権利者団体の(とついひとまとめにしてしまいがちだが、正式には実演家著作隣接権センターの)椎名和夫さんは、元ムーンライダーズのメンバーでもあって、CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティという対談本を読んでみれば、ほとんどの音楽ファンは椎名さんに好意を持つことだろうと私は思うのだ。それでも、今回の記者会見の記事を読むと、何点かはどうしてもつっこみたくなってしまう。

ここでは、特に気になった点のみについてコメントすることにしたい。

【問】HDDを内蔵する「一体型機器」は、「汎用機」との区別がつきにくく、いずれは「汎用機」まで指定につながるのでは?

 2年の議論の結果、権利者はパソコンを対象に含めないことに合意した。これは権利者サイドの最大の譲歩。今、録音/録画メディアは、MDやDVDから HDDに移行しつつあり、「一体型の機器」を制度の対象にしなければ、補償金の「実体」が生まれない。メディアは「対象機器の拡大」と書くが、そうではな く「対象機器のシフト」が正しい。(Ascii)

・まず、PCを対象に含めないことに同意したことを「譲歩」と呼ぶのはさすがに誤りだろう。汎用機器はそもそも対象になり得ないのであって、譲歩があったから対象にならなかったわけではないのだ。
・MDやDVDとHDDの一番の違いはなんだろうか? HDDは配布・拡散できない、という点ではないだろうか。これはiPodについても同じである。MDは友人に渡せるが、iPodごと友人にあげるなんてことはないだろう。また仮にiPodを貸したとしても、そこから音楽ファイルのコピーが取り出せるわけでもない。すなわち拡散しないのだ。この2つのメディアを一緒くたに扱うのは本来無理ではないだろうか?

 そもそもなぜ補償金制度が必要なのかについては、椎名氏の発言をまとめると「メーカーが販売する機器や媒体が、ネットなどにおける無償コンテンツの発生、流通を支えていることに疑いはない。補償金制度は、そうした機器や媒体を販売することでメーカーが得た莫大な利益の一部を権利者に還元するもの」ということになる。(Ascii)
・私的録音補償金のそもそもが、「儲けているメーカーの利益を権利者に還元すること」だったっけ????、という大問題を含んでいる。これはすでに、現行著作権法に規定されている補償金の概念の先を行っているような気がする・・・・。平たく言えば間違い。冷たく言えばウソ。



椎名氏 補償金制度による対応をやめて、契約と保護技術による個別課金に委ねられるとすれば、それこそ正真正銘の「消
費者が負担する構造」が生まれて、メーカーがその「負担のサイクル」から未来永劫、開放されるだけのこと。その事実関係に消費者は気が付いていないように
思われる。




 メーカーが無償コンテンツの発生、流通を支えて上げてきた利益から、消費者とともに私的複製のコストを払ってきた。その金を消費者だけが負担することになるのは、本当に消費者が望んでいることなのか──。それを「消費者に知ってほしい」と椎名氏は訴える。
(Ascii)

・ここもなんだか随分怪しい。まず現在の補償金はMD・音楽用CD-Rなどのメディアにも含まれており、払っているのは消費者である。その証拠に、この補償金制度には(実際は機能不全な)返還制度が存在するが、返還請求を行えるのはメディア購入者、すなわち消費者である。返還を受けられる人が払った人のはずだ、と考えるのはごく自然ではないだろうか?


次に、JASRAC菅原理事の発言を取り上げてみよう。

この調査でレコーダの利用の実態はほとんはタイムシフトであることが明らかになっている。ということは機械上の問題がなければ多くのユーザーにとってコピーワンスでよかった話だったことがわかる。(ITPro)
・上記発言はJEITAの行ったアンケートに触れてのもの。
 JEITAによる意識調査(発表資料1発表資料2

 この発言を読んで思い出したのは、「今は鈍行しか止まらない駅に急行を止める必要があるかどうかの調査」というエピソードを紹介したワインバーグ著のシステム開発に関する本のことだった。少し説明すると・・・

現在は鈍行列車しか止まらない駅に、急行も止めてほしいという住民の要望があった。そこで調査員が駅に1日滞在し、急行を待っている乗客の数を調べてみた。すると、該当の駅で急行を待っている人は一日経っても一人もいなかったので、「急行に対する需要はなし」という結論となった。
デジタル放送にはコピーワンスによる制約があり、アナログTVをビデオに録画していた時のように、思うような保存・編集が行えない。そこで必然的にタイムシフトのみの利用となる。そこでもっと自由な利用を望むユーザーの声が大きくなった。そこで現状の利用形態を調べてみると、タイムシフトのみに使用しているユーザーがほとんどだった、と。これをどう解釈するか、という問題である。

もちろん、「タイムシフトがほとんどということは、コピーワンスで良かったのだ」と考えることも出来るかも知れない。ただその場合、「なぜコピーワンスの評判が悪かったのか?」という原因を見誤る結果となるだろう。コピーワンス制限があるんじゃタイムシフトくらいにしか使えない、というのが本当のところではないのだろうか。急行が止まらない駅で急行を待つ客なんて存在しないのだ。

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2008.05.26

最初に無理を言っておけば、あとで譲歩になるのか?

「ダビング10」6月2日開始はムリ--民放連会長がメーカー側に譲歩を求めるコメント(CNET Japan)

日本民間放送連盟会長による上記コメントは、ただの視聴者からすればかなり腹立たしいものである。

総務省、文化庁の場で、放送局と権利者の皆さんが大幅に譲歩したことは、国民、視聴者の皆さんに十分理解されていると思う。権利者の皆さんを失望させることだけはないように、協議がソフトランディングすることを願っている

権利者が失望しないことがそれほど大事なのだろうか?
消費者がうんざりするほど嫌気が差したとしても、それは問題ではないのだろうか?

ダビング10を巡る経緯については、MIAUによるシンポジウムが非常に参考になる。
あらためて下記をご覧いただきたい。

シンポジウム「ダビング10について」のご報告(MIAU)
特に、デジコン委員会にも参加されていた、主婦連・川村真紀子さんの資料に注目。
河村真紀子・「デジコン委員会-ダビング10への経緯概要説明」
* http://miau.jp/20080116/kawamura20080116.doc

要は、放送事業者が、最後まで我を張り通していたがゆえに全然結論が出なかったのである。最初に思い切り高いハードルを要求してそれを主張しつづけておけば、少し下げるだけで「譲歩した!!!」と言い張れる。「ダビング10では権利者が大幅譲歩した」という物言いは、要はゴネ得、という意味にしか聞こえない。

なぜなら、上記デジコンにおいても、何度質問されても譲歩できない理由を明らかにはしていなかったらしいからである。こうした振る舞いが許されるのならば、消費者としては「コピーフリー・補償金なし・無限世代コピーしかあり得ない!!!」と主張させていただきたい。それで雀の涙ほどの補償金を嫌々了承して、「譲歩したじゃないか!!!」と言い張らせていただきたい。

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2008.05.22

山下友美:5/30発売の「ぱふ」にて特集

5/30発売の「ぱふ」にアルジャンの特集が載ります。 (ほらふき山日記)

山下友美さんのblog「ほらふき山日記」にて情報がリリースされました。今月の漫画情報誌「ぱふ」では薬師アルジャンと山下先生の特集が組まれるそうです。

元薬剤師兼業漫画家であったこともある山下先生の経験を生かしつつ描かれる、毒と薬を巡る神秘の物語。連載も現在クライマックスに向けて大変スリリングな展開となってきており目が離せません。

ああ、そろそろ「ひみつのゴードン博士」のシリーズも単行本になって欲しいです。これはSFでもありコメディーでもあり、同時に泣けるハートフルな珠玉の作品なのです。はい。編集部にお便りしましょう(笑)。

「薬師アルジャン」の近刊6と7の表紙
Yamashita67

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2008.05.20

要は、消費税でまかなおうとするのは間違い、ということでは?

低所得ほど負担増 年金世帯は月7000—8000円増(東京新聞)
 政府は、全国民が加入する基礎年金を現行の「保険料方式」から、財源すべてを税でまかなう「全額税方式」に転換した場合、家計への影響も併せて試算した。総じて、基礎年金分の保険料が軽減される額よりも、消費税負担の増加額の方が大きくなるという結果になった。
というニュースなのだが。

 サラリーマン世帯を所得階層別にみると、月収入が二十九万四千円の世帯の月々の負担額は、基礎年金の保険料分が四千円なくなる一方で、消費税負担 額は六千−七千円アップ。差し引き二千−三千円の負担増になる。これに対して保険料の半額を負担している企業は、税方式により四千円下がる。

 月収入八十五万七千円の世帯の負担増額は〇−三千円。所得階層の低い方が、負担の増加率は大きくなり、“逆進性”が強まる。

これを見る限りでは、全額税方式自体が問題というより、単に「すべてを消費税でまかなおうとすると負担の逆進性が強まる」というだけの話に思える。つまり、あくまでも消費税アップの布石として国民を洗脳しようとしているだけなのではないだろうか。

ニュースが続いている道路財源の無駄使いだけでなく、こんな話もある。

公務員住宅を廃止して公平な社会に
(Safety Japan)

要は、財源を生み出す方法は他にいくらでもありうるわけで、「消費税を上げる以外に方法はない」というのがそもそも嘘だということをまずは忘れないようにしておきたい。

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2008.05.15

Julia Marcell : ニューアルバム「it might like you」リリース

遂に発表されました。ポーランドの女性シンガーソングライターJulia Marcell待望のデビューアルバムです。

http://www.itmightlikeyou.com/en/

Julia Marcell's New Album Teaser 05

実物が手元に来てみないと詳細は分かりませんが、ジャケットはベースになる写真の上に透明フィルムが掛かるような仕様のものかと思われます。上記のアルバムプロモーションサイトでは15種類のジャケットを見ることができます。また自分の好きな絵柄をデザインするコーナーもあります。

さて、内容ですが、予想を遥かに超えて、実に素晴らしいものに仕上がっています。アルバム全体のイントロにあたる1曲目は別として、どの曲もすごいのです。ラスト3曲は無料でダウンロードできます。11.Night of the living deadは特に素晴らしく(しかしなんというタイトル(笑))、これが無料なのは実に太っ腹と言えるでしょう。

http://www.sellaband.com/shop/artist/juliamarcell/
1.Put your headphones on
2.Outer space
3.The story
4.Married to life
5.Billy elliot
6.Dancer
7.Side effects of growing up
8.Words won't save you
9.Carousel
10.Fear of flying
11.Night of the living dead

*Limited Edition特典
- 5 Video Teasers
- Making of Album video documentary
- 'Billy Elliot' music video
- Photos from the recording session
- Album in mp3 (256 kb/s)
- Lyrics
- List of Believers
- Cover art thumbnails


約束どおり、ピアノ、弦楽器、パーカッションとどれもアコースティックなアンサンブルを一発録りし、出来るだけスタジオライブ風な音質に仕上げられています。その生々しいサウンドで、時に激しく、時にユーモラス、Juliaいわく"Classical Dance Punk"な曲や、ポーランドの子供遊び歌風な曲などを次々に演奏していきます。6.Dancerでは「We Are All Prostitute」なんて歌詞も出てきてThe Pop Groupを思い出させてくれたりも。

曲が似ている訳ではありませんが、私はこのアルバムにPeter Hammillの音楽とも通ずるものを感じました。真摯でありつつユーモラス、美しくそして激しい歌。

CDが届いたらゆっくり聴き返していこうと思いますが、少なくとも2008年中に出会うだろう音楽の中でもトップクラスのアルバムになる予感がしています。

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2008.05.14

Julia Marcell : Sellabandからのアルバムリリース 5/14

ポーランドの女性シンガーソングライター、Julia Marcellのデビューアルバムがまもなくリリースされます。アルバムタイトルを含めた詳細はリリースと同時に公開されます。まずはこのアルバムを実現する資金を提供したファン(believer)に向けたオンライン・リスニング・セッションが開かれ、その後一般向け発売が行われます。

Julia Marcell on SellaBand
www.juliamarcell.com
Julia on Myspace

Photo


JuliaはSellabandに参加し、3ヶ月と数日でファンから$50000の資金を集めました。この資金によるアルバムのリリース日が2008年5月14日と遂に正式発表されました。チェロ、バイオリンなどの弦楽器を担当するバンドメンバーと共に作成されたアルバムは、Juliaの希望によって、スタジオでの一発録りにこだわった「Classical Dance Punk」に仕上がったとのことです。

Julia Marcellは私がSellabandを知るきっかけになったアーティストでした。自主制作EPが素晴らしいものだったので、ぜひこの人にはフルアルバムを製作してほしい!、と思わずにはいられませんでした。幸いにして、実際に彼女の音楽を聴いたリスナーはあれよあれよという間に虜となり、非常な短期間で製作資金が集まってしまいました。

既にやりたいこともはっきりしていて曲のストックもあったJuliaは、これまたあっという間にレコーディング完了。曲も録音も、そしてアートワークも本人が望むままに実現したアルバムが、いよいよ発表されるということで、久しぶりに私も血が騒いでおります。


Julia自身による、アルバムリリース告知ビデオ
Julia Marcell's New Album Teaser 01
Julia Marcell's New Album Teaser 02
Julia Marcell's New Album Teaser 03




以前のblog記事
MAL Antenna: リスナー自身がレコード会社?:Sell A Bandに見る音楽ビジネスの未来
MAL Antenna: Julia Marcell:ファイナル・カウントダウン!!


Sellaband Tribuneで見るJulia Marcellの軌跡

2007-07-31 43
Tribune初登場。参加1カ月で2万ドル弱の資金を集め、正に彗星のような登場だった。

2007-09-04 48
ポーランド在住のJuliaが、オランダにてSellabandのスタッフや他の参加アーティストと邂逅を果たす。



2007-09-11 49
次に$50Kのゴールに達するのは誰か?のファン予想コーナーに登場。



2007-09-18 50
オランダのスタジオにて、25人ほどのファンを集めた特別セッションを開催。Sellabandに参加するファンの幾人かはここでJuliaに会うことが出来た。



2007-09-25 51
My 50K Planとして、ゴールした暁にはどのようなアルバムを作成したいかを発表。



2009-10-09 53
Sellabandのスタッフが仕事で出かけている日中に$50000を達成。最後の1万ドル達成に要したのはわずか6時間だった。ゴール後に流すメッセージビデオがまだ作成されておらず、ファイナルカウントダウンチャットはビデオが先か、ゴールが先かで白熱、結果30秒差でビデオが先だった。



2007-10-16 54
Sellabandという新しい試みにおいて、ファンから目標資金を集めたJuliaはポーランドで時の人となる。新聞、TVの取材が次々と。この報道ラッシュ以降、ポーランドからのSellaband参加アーティストが相次ぎ、コミュニティではPolish Invasionと呼ばれた。


2007-10-30 56
ベルリンに赴き、A&Rマネージャー、プロデューサーと面談。レコーディングスタジオ候補を見学し、録音スタジオを決定。

2007-12-11 62

アルバムの具体的プランをほぼ固める。2008年1月にレコーディングセッションを行うことを決定。現在はリハーサル中。


2008-01-29 68
レコーディング風景。


2008-03-04 72
レコーディング完成。マスタリング、アートワーク作成作業へ。



2008-04-15 78
アルバムはミキシング中。そろそろ宣伝を始めなくては・・・とYouTubeやMySpaceでアルバム告知ビデオシリーズを開始。5週間連続で発表し、最後のビデオはリリース日になるとのこと。


2008-04-22 79
予告どおり、Album Teaser開始。


2008-04-29 80
アルバムリリース日決定。2008年5月14日となった。




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2008.05.12

レコードジャケット、であれども

スコーピオンズ『狂熱の蠍団〜ヴァージン・キラー』がウィキペディア英語版から消える? (CD Journal)

なるほど。こんなところにも児童ポルノ法の余波が。
余波、というべきかどうか定かではないが、ここまで適用すべきものなのだろうか。

Virginkiller

上記がオリジナルジャケットのデザイン。発表当時、日本はオリジナルジャケットで発売できた数少ない国だったと思われる。ところが、日本でも現在は変更ジャケットになっているようだ。

Virginkiller2

こちらは贔屓目に見ても、せいぜいがベスト盤のジャケットデザインなレベルで、オリジナルデザインが持つ妖しいヤバさはまったくない。

スコーピオンズは物議を醸すジャケットがことの他好きだったロックグループで、色々な理由で片っ端から引っかかっている。

Taken_by_force

日本では問題にもならなかったこのジャケット、宗教的な理由で差し止め。墓場で殺し合い、というのがよろしくなかったらしい。

Lovedrive

胸にガム、というこのレベルでもダメだったようだ。

Animal_magnetism

上記は表ジャケットなので、なぜ問題になったかこれだけでは分からない。実は裏ジャケットでは犬が首を突き出しており、犬の顔は男の影になっている。それがフェラチオを連想させるのでダメ、という理由だったそうな。「In Trance」や「Virgin Killer」からすれば随分と間接的な進化を遂げたものだ(笑)。

こうして並べてみると、物議を醸すかもなあと思えはすれど、どれも即発禁になるような直截的な表現ではないと思う。歴史から抹消されるというレベルで排斥されている訳ではないけれど、内容も素晴らしい「Virgin Killer」と「Taken By Force」はオリジナルジャケットで存在し続けて欲しいものだ。

Scorpions Official Site
http://www.the-scorpions.com/english/

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2008.05.06

今年は何か結論が出るのか?:私的録音補償金

実に不可解なニュース。事前に新聞ネタになっているということは政府筋からのリークだろうか。

不可解、というのは、仮にこれが真実だとしても、リークしたことによって生まれる利益があるとも思えないからである。そもそも、見当違いも甚だしい「iPodやハードディスク内蔵レコーダーを補償金対象にしてくれないと、ダビング10やらないぞ」という脅しを記事で「秘策」などと呼んでいるのが本気なのか嘲笑なのかすらよく分からない。

冷静に考えてみよう。ダビング10の開始を待ち望んでいる人なんて実在するのだろうか?(笑)
いないなら、そもそも脅迫として成り立たない。

ダビング10みたいに中途半端な対応はどちらにせよ過渡期のもので、あるべき姿はNO-DRMだろう。結局コピーコントロールされていれば自由な編集も出来ないし、孫コピーも出来ないからメディア寿命と共に中身も消え失せる。役に立たないデジタル放送ソースに対して、どこまで録画ニーズがあるのだろうか。あるとすれば結局はタイムシフトが主であろうし、その場合コピーワンスでも全く問題ないだろう。

結局うだうだやってる間に、今度は地上波停止の実施日が変わるのではないだろうか。
ダビング10がなりゆきで延期になったように・・・(笑)。


iPodに「著作権料」上乗せ 文化庁提案へ(朝日新聞)

2008年05月06日03時04分


 iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、テレビ番組を録画するハードディスク内蔵型レコーダーに「著作権料」の一種を課金する制度改正の骨子案を文化庁がまとめた。8日の文化審議会に提案する。抵抗するメーカーに対し、課金を求める著作権団体が「秘策」で揺さぶりもかける。同庁は4年越しの論議に決着をつけたい考えだ。

 著作権料の一種とは、一般の人が家庭で音楽や番組を録音・録画する行為に対して課金されている「私的録音録画補償金」のこと。すでにMDレコーダーやDVDレコーダーといった録音・録画機器には導入されている。実質的にはメーカーが機器の売り上げから著作権者に支払っている。金額は価格の数%。


 最近登場した携帯音楽プレーヤーなどについては、著作権団体の要望を受け、文化庁が文化審議会にはかり、05年から本格議論してきた。実演家著作隣接権センターなど著作権団体と反対するメーカーの両者の意見を折衷した制度改正の骨子案をまとめた。

 同案では、携帯音楽プレーヤーとハードディスク内蔵型録画機器を挙げて「課金対象にするべきだ」と初めて明言する。一方で、メーカーに配慮して、録音・録画の機能がある機器でも、パソコンのような汎用性の高い機器や、携帯電話のように別に主な機能がある機器への課金は見送ることにした。


 課金予定額は案には記さず、メーカーなどに配慮して慎重に決める姿勢を強調する。課金が決まった場合、これまでと同程度かより低い率、金額では1台数百円前後、年間では計数十億円規模になると想定される。


 文化審議会・私的録音録画小委員会の審議で、メーカー側委員は反対する公算が大きい。メーカーは、課金で機器の値上げはしにくく負担が増えるとの思いがあるためだ。


 一方、著作権団体の「秘策」は、6月2日から導入する方針の「ダビング10」の拒否だ。デジタル放送のテレビ番組を自宅のハードディスク内蔵型レコーダーなどに録画した後、DVDなどに9回複製できる新しい方式だ。


 著作権団体は導入の条件として補償金の賦課などを求めてきた。補償金を課せないなら、新方式に同意できないという考えで、ニーズの高まる北京五輪までにメーカー側が受け入れを決断する、というシナリオに期待している。(赤田康和)


     ◇

 〈私的録音録画補償金〉 著作権法は、音楽やテレビ番組などについて、私的使用を目的とした家庭内での複製は認めている。ただ、デジタル方式の機器は、高品質の録音録画や複製が可能で、著作権者が得られるはずの利益を損なうおそれがあるとして、私的複製をする利用者に「補償金」の支払いを義務づけている。実際には個別の利用者から徴収できないため、メーカーがまとめて補償金管理団体に支払っている。現在の年間の総額は30億円前後。



関連エントリ:
コピー制御信号を脅しに使うことについて(benli)
著作権法の平成11年改正の際には,コピー制御信号に対応する機器を製造・販売する義務を負わせないことを前提としておきながら,コピー制御信号に対応させることを事実上メーカーに義務づけるために無料放送である地上波デジタルにスクランブルをかけていることだけでも本来許し難いのに,そのようにして半ば強制的に録画機器に対応させたコピー制御信号を,私的団体による徴収され分配される一種の税金の範囲を拡張することに反対させないための脅しとして用いるというのは許されることではありません。
目次3(無名の一知財政策ウォッチャーの独言)
5月8日の私的録音録画小委員会で、相変わらず、権利者団体と癒着した文化庁は、携帯音楽プレーヤーとハードディスク内蔵型録画機器を課金対象にするべきというペーパーを作り、権利者団体がダビング10の拒否という秘策で揺さぶりをかけるらしいが、文化庁も権利者団体もこんな適当な詐欺が今の時代に通用すると思っている時点でバカまる出しである。iPod課金とダビング10の間には関係がないし、コピーワンスにせよ、ダビング10にせよ、実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しいコピー制限を課している機器に、さらに補償金まで賦課しようとするのは不当の上塗りである。iPodや純粋なHDDレコーダーにしても技術の進展も踏まえて、なおその課金を正当化するに足る理屈は未だに何一つ示されていない。間違っているのは、いかなる場合でも「複製=対価」の等式が成立するという文化庁と権利者団体の歪み切った観念の方である。一ユーザー・一消費者・一国民として言わせてもらうが、私的録音録画問題に関する限り、妥協の余地など一切ない
私の見る限りユーザー・消費者からほとんど全くと言って良いほど期待されていないダビング10の拒否などいくらしてもらっても構わないが、そもそも不当だったものについて権利者団体が何かしらの権利を持っていると主張することからして間違っている。そんなことを持ち出すなら、そもそもの諸悪の根源たるB-CASの排除から、検討してもらいたいと思う。このような記事を読む限り、相変わらず、補償金問題に関しては、合理的な話し合いの余地などなさそうである。

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2008.05.05

統計でウソをつく方法 実例

いや、騒ぐほどのことではないのですが、実例として。

子供の数 過去最低を更新(読売新聞)


 「こどもの日」にあわせて総務省が4日に発表した推計人口(4月1日現在)によると、日本の子供の数(15歳未満)は、昨年より13万人減って1725万人となり、27年連続の減少となり、過去最低を更新した。

 総人口(1億2773万人)に占める割合も13.5%と34年連続で低下し、少子化がさらに進んでいる実態を浮き彫りにした。

 男女別では、男性884万人、女性841万人。年齢層が下がるほど少なく、中学生(12〜14歳)は359万人、小学生高学年(9〜11歳)358万人、小学生低学年(6〜8歳)351万人、3〜5歳332万人、0〜2歳が324万人だった。

 都道府県別(07年10月1日現在)の割合では、沖縄県が18.1%で最も高く、最低は東京都の11.7%だった。ただ、前年比では、東京都のみ増えた。
(2008年5月5日 読売新聞)

この記事で使用されているグラフを一見すると、2008年における15才未満の人口は1950年の1/10に見えますね。本当は半分までは行かず、1/2よりちょっと多い程度のはずなのに。

2008050523082691l

これは縦軸が1500万人から始まっているからです。
数値としては半分だ、と分かっていても、これほど減少を強調したグラフを見ると、つい危機感を覚えてしまいますよね。

統計でウソをつく法—数式を使わない統計学入門
(ブルーバックス 120) (新書)

印象操作とプロパガンダへの自衛策として、分かりやすくてとても勉強になる本。古い本ですが、やはり名著かと。実におもしろいですし。

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